KZ EDX Pro X インプレ|現実とバーチャルの間を描く、体温を感じるサウンド
- 2025/10/13
- イヤホン
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目次
サウンド傾向
中域に厚みを持たせたナチュラル系ドンシャリ/柔らかく耳当たりの良い音/暖かさと明瞭さの共存
おすすめ
ボーカルの体温や存在感を感じたい人/キャラソンやVtuber楽曲など“非現実の中の人間味”を楽しみたい人
合わないかも
繊細なバラードやジャズ/シャープさや抜け感を最優先に求める人/高域のキラつきや空気感を重視する人
印象
中域の明瞭さと低域の温もりがボーカルにリアルな体温を与えている。現実とバーチャルの間を描く、コスパと完成度の高いチューニング。
このインプレは個人購入によるものです。細かめに聴き込んでレポートしているので、「ざっくりどんな音か知りたい!」という方は【⑦総評】以降だけ読めばだいたいわかります。

純正イヤピ・ケーブル使用。スマホ→audorect ATOM4で接続。100時間ほどエージングしました。
全体バランス
温度感
中庸。下はやや暖かい。
メイン帯域
低・中域。バランスはドンシャリだが、音作りの軸は上にはない。
第一印象
ドンシャリだけど中域が立っている。
音場・定位
横
やや広め。高域で作った、人工的な広がり。
奥行き
近く浅め。
高さ
天井への反響はあるが、さほど圧迫感はない。並。
定位の正確さ
あいまい。
音像サイズ
やや大きめ寄りの中サイズ。
輪郭・分離
輪郭はややくっきりしているが柔らかく耳あたりが良い。分離は不得手。
低域の質と量
量感
やや多め。
質感
最深部だけやや膨らみ、以降は硬質・タイト。ベースラインよりドラムのアタック感が強め。
立ち上がり・キレ・制動
立ち上がり速め。制動というよりも自然減衰が速いようにも聞こえる。いずれにしてもキレはなかなかいい。
ボーカルへの干渉
ほとんどなし。
中域の質
ボーカル位置
中。輪郭は前まで抜けてくるが、芯が残って体温を感じる。
透明感
体温と引き換えにやや基音には濁りがあるが、張り出した輪郭はなかなか透明で、総じてナチュラル。サ行の刺さりはややあるが、体温由来の実体感があるために軽薄さは感じない。
厚み・母音の伸び
ボーカルの厚みはなかなかある。芯は一本くっきりある。かなり滑らかで伸びもなかなか悪くないが、細かい表現やそれに由来する艶は少なめ。
高域の質
滑らかさ/粗さ/鋭さ
やや粗め。エッジは丸く柔らかいが、一定の解像感は残っている。
刺さり感
ピークはあるが不快な刺さりは少ない。
空気感・倍音の質感
有機的でウエット。ややくすみを感じなくもないが、厚みで聴かせてくれる。倍音は脚色を感じない。とても自然。
ハイハット・金管の粒感と輝き
ハットは粒立ちよく、余韻よりもキレ型。響きは軽いがかえってシャリつきが抑えられている。金管はボーカル同様にやや濁りはあるが、かわりに厚みと実体感がある。重厚感のある響き。
疲労耐性
聴き疲れ原因
音源によりときおり刺さりが気になることもあるが、少なめ。
装着疲労感
なし。
長時間使用への適性
長め。
総評
バランスはドンシャリでありながら中域にしっかりとした厚みを感じるのは、やや薄めのミッドベースとの相対がひとつと、もうひとつは広がるサブの下支え。二つの相乗効果は芯に濁りすら感じるほどで、必要十分な厚み。その濁りすらも芯と一体になる輪郭の透明感でフォローできており、弱みに感じるどころかむしろ非常に繊細なバランス感覚で両立できている。
低域はキレもいいし量感もあるが、目的そのものは前述のとおり中域の引き立てに特化している印象。高域も自然で丸くアクや個性もなく素直。そんな音作りなので、もっとも聴かせたい意思が伝わってくるのは中域。ディテールは並だが、それ以上に実体感や体温をしっかりと感じ取れることと、しっかりと明瞭さが同居できているところがいい。ボーカルにディテールや抜け感を求める人よりも、しっかりとした厚みを求める人にハマる個性だと思います。
コスパが非常に高いことも見逃せないところ。個人的にはこの価格帯で聴けていいレベルのボーカルではないと言いたいくらいの完成度です。
聴きどころ
低域がボーカルの実体感を強く引き立てているので、繊細な歌い手や曲よりは明るくノリと勢いで聴かせるタイプの曲、さらにいうなら中域の明瞭さとアタック感が噛み合うタイプの、現代的な打ち込み系の曲がいいでしょう。
個性を引き出したかったらキャラソンやVtuberの楽曲など、人間味を演出した非現実の音楽で、ボーカルの実体感を感じる聴き方をしてみてください。バーチャルの世界から届く声に、現実よりも近くの温度を感じられると思います。
その微かなあたたかさこそが、この機種の描く音の世界です。
スペック等
製品名:KZ EDX Pro X
インピーダンス:23±3 Ω
感度:108±3 dB
周波数特性:20–40000 Hz
プラグタイプ:3.5 mm
ピンタイプ:0.75 mm
ケーブルタイプ:平型・透明ブラックケーブル
ケーブル長:120±5 cm
装着方式:カナル型(インイヤー)
- カテゴリー|イヤホン
- メーカー|KZ
- 価格帯|-1,000円
- メイン帯域|中域メイン帯域|低域
- 音の温度感|ニュートラル
- 音場サイズ|中
- 音像サイズ|中
- 定位|不正確
- 分離|不明瞭
- 低域:量感|大
- 低域:質感|タイト
- 低域:タイプ|スピード系
- ボーカル位置|中
- 透明感|ナチュラル
- ボーカルタイプ|厚み型
- 伸び|中間
- 粗密・滑らかさ|粗い粗密・滑らかさ|丸い
- 刺さり感|刺さりなし
- 空気感|有機的空気感|ウェット
- 倍音の質感|自然
- 得意楽器|打ち込み得意楽器|シンセ得意楽器|ドラム得意楽器|ベース得意楽器|ボーカル
- 入手形態|自費購入
- 記事の種類|レビュー・インプレ
コメント
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コメント (2)









KZ EDX Pro X、とても良い製品ですよね
少し前にAmazonでクーポン込み1000円とかになってたと思います
以前紹介していたKZ EDC Proとは似た傾向ですが若干違う音作りとピンタイプで差別化をしてる印象があります
どちらもこの価格で買えて良いイヤホンじゃない…KZやばい…
@Noname
第一印象でソックリ!と書きたくなるくらいEDC Proとは似た音でしたね。
どちらかというとEDC Proは滑らかさに、EDX Pro Xは明瞭さに重点を割いている印象でした。